<次元先生の銃講座・最終回>


 よう、久しぶりだな。
 ちょっと見ねぇ間に、随分と客のメンツが入れ替わったじゃねぇか。どうだ、元気だったか。
 あ?俺か?
 ちょっと野暮用でな、イタリアまで行ってたんだ。で、ソイツも片づいた事だし、こっちに戻ってきたって訳だ。
 さて、と。
 近況報告はこれぐらいにして・・・・・今日はそうだな、弾の話をしようか。
 銃っていうと、大体の場合において注目を浴びるのは本体の方だ。だがな、いくら名銃と呼ばれる銃でも、弾がなくなりゃただの『鉄の 固まり』だ。
 弾があって、初めて『鉄の固まり』が『銃』になる。だが、そこで素人が勘違いしやすいのが、「弾の種類」だ。
 ほら、コレを今読んでるそこのアンタ。よく知られているようなハンドガンならいざ知らず、ライフルといえば弾なんて一種類しかねぇ・・・なんて思ってやしねぇか?だが、いくら俺でもココで弾を全種類説明すんのは不可能だ。弾の種類なんて、それこそ本が一冊書けるほどあるからな。
 だから今日は『ルパン三世』という作品にポイントを絞って、俺たちが使っている弾の話をするか。

 

 

<.357Magnum>

 今までこの講座を読んできて、コイツが何だか分からねえって奴はいないと思うが・・・・まぁ一応説明しておくと、俺が使ってるのがこの弾だ。リボルバー専用の弾丸の一つで、他には『.44マグナム弾』とか『.45CP弾』などがリボルバー専用だ。関係ないが、『シティーハンター』の冴羽遼(PYTHON-357)もこの弾の愛用者だな。

 俺の銃っていうと手っ取り早く『マグナム』とか、『コンバットマグナム』なんて言ったりしてるが、マグナムってのは、そもそも弾の名称だ。銃本体の名前じゃねえ。マグナム弾が装填出来る銃だから、『マグナム』なんて愛称が付いてるだけだ。中には『リボルバーなら全部マグナム弾が装填出来るんじゃないのか』って思ってるヤツもいるだろうが、そいつは大きな間違いだ。リボルバーだって色々だからな、マグナム弾が装填出来るオンナもいれば、装填出来ねえオンナもいる。『マグナム』と呼ばれるのは、前者のオンナの事さ。
 話が早速逸れちまったな。元に戻そうか。

 この『357マグナム』だが、正式名称は『.357マグナム弾』。更に詳しく言うと『0.357マグナム弾』。この0.357ってのは、銃弾の直径の事だ。0.357インチ、それがコイツの大きさだ。インチって言われてもピンとこねえってのが大多数だろうから、ちっと説明するが、1インチは2.54cm。ミリメートルに直すと25.4mmだから、ちっと自分で計算してみな。0.357×25.4、出た答えがコイツの『ミリメートル表記版』って訳だ。

 なんでこんな面倒くせえ事をしなきゃならねえかって言うと、アメリカじゃそもそも長さの単位が『インチ表記』だろう?しかも拳銃の口径を、小数点以下の数字で表す事が多い。だから、数字の最初に『.』を付けて、この口径が小数点以下の数字である事を表してる、とまあこういう訳だ。

 こいつはそもそも、『.38スペシャル弾』の強装弾バージョンだ。つまり、『.38スペシャル弾』よりも薬莢部分をもうちっと長くして、その分中の火薬・・・・本当は装薬って言うんだが・・・を増やしてあるんだ。
 ココの管理人の隠れコラムにも載ってるが、基本的には『.357マグナム弾』を撃てるオンナだったら『.38スペシャル弾』も撃てるが、逆は不可能。つまり、『.38スペシャル弾』しか撃てねえオンナで『.357マグナム弾』を撃つ事は出来ねえんだ。そもそも弾頭がシリンダーでつっかえちまって、装填出来ねえしな。

 この『弾頭』だが、弾頭と一口に言っても色々あってな。『FMJ(フルメタル・ジャケット)』、『HP(ホロー・ポイント)』、『リード』、『フランジブル』・・・・・・・それから『ソフトポイント』に『セミジャケットブレッド』、軍用になると『アーマーピアシング』とか『トレーサーアモ』、まだまだ色々あるが、まあご覧の通り様々なんだな。中でも『.357マグナム弾』の弾頭は『JHP弾(ジャケッテッド・ホロー・ポイント)』と言って、他のHP(ホロー・ポイント)弾に比べると被甲面積が多い。貫通力も高めだが、破壊力が高いのがHP弾の特徴だからな。

 そもそもHP弾(ホロー・ポイント)ってのは、大型動物の狩猟用に開発されたシロモノでな。ターゲットに当たると弾頭がキノコ状に変形し、通常の2倍以上の破壊力を生み出す。オマケに弾頭の先端に孔が空いててな、コイツが上手いこと変形して強力なストッピングパワーの役目を果たすため殺傷能力が高い。だからまあ、俺達みたいな稼業をしている人間にとっちゃ、まさに御用達って訳だ。

 

<.45ACP>

 コイツはあの銭形が使ってる弾だな。ちなみに銭形のオンナは『コルト1911A1』、通称『コルトガバメント』。昔のアメリカ陸軍制式軍用拳銃だったオンナさ。まったくアメリカってのは本当に大口径銃が好きな国だと、しみじみ思うぜ。世界中どこ見たって、45口径やデザートイーグルの人気が高い国なんてアメリカぐらいのモンだ。ヨーロッパ辺りに行ってみな、もうちっと好みがスマートになるからよ。

 ・・・っと、まあそれはどうでも良かったな。

 とにかく、その『コルトガバメント』から飛び出すのが、この『.45ACP』。コイツはさっきもチラっと言ったリボルバー用の弾丸、『.45CP』をオート用にしたシロモノさ。コイツのアルファベット部分、ACPってのは『Automatic Colt Pistol』の略だ。

 さっきも説明したが、コイツの正式名称は『0.45ACP』だ。ちっとミリメートルに直して計算してみな(0.45×25.4)。そのデカさに驚くだろう?それがコイツの直径さ。そんだけデカきゃ、装薬の量だって相当なモンだ。

 そこまで聞くと、いかにもコイツが最強に聞こえるだろう?だが世の中、そう甘くはねえ。何と言ってもコイツの弾頭部分は拳銃としては最大級だからな、それなりに重い。という事は、初速がそんなに出ねえから、どうしても貫通力も低くなってしまう。ナメてかかる訳じゃねえが、防弾チョッキを着てりゃ、まあよっぽど大丈夫だろうな。

 それなのに何でコイツが好まれるかって話だが、この後説明する『9mmパラベラム弾』や『38口径』よりは遙かに威力があるからだろうな。何せ撃ち合いにでもなった時、『9mm』じゃ何発弾を浪費するか分かったモンじゃねえが、コイツだとほぼ一発で相手を足止め出来る。初速が遅いとはいえ、初活力自体はコイツの方が上だ。まあ、もっともアメリカの『.45口径人気度』は、俺に言わせりゃ病気に近いような気がするんだがな。

 

<9mmパラベラム>

コイツを使ってるオンナは何たって多い。『ベレッタ』もそうだし、ルパンのワルサーだってコイツを使ってる。ごく一般的なオート用の拳銃、それがこの『9mmパラベラム弾』だ。元々はヨーロッパで人気だった弾だが、ここまで来ると世界標準じゃねえかって気がしてくるのは俺だけかね?

 弾の名前を見て気付いた奴もいるだろうが、コイツの名前にゃ最初っから『9mm』と、口径(銃弾の直径)の大きさが明示されている。今まで説明した弾は、『.357マグナム弾』にしろ『.45ACP弾』にしろ、パッと見ただけではその大きさにピンとこねえって奴が多かっただろう?だがコイツは、名前を見りゃ一目瞭然だ。

 これがどういう事かっていうと、コイツはヨーロッパで開発された弾だって事さ。さっきのは2つともアメリカ生まれだったが、コイツはヨーロッパ生まれ。ヨーロッパ辺りだと、長さの単位が日本と同じで『ミリメートル表記』なんだ。だからいちいち数字の前に『.』を付けたりする必要がねえって訳さ。ミリメートル表記で小数点以下の数字を使う弾なんざねえからな。

 この9mm口径の弾ってのは拳銃の弾じゃ一番多い。俺の使っている『.357マグナム弾』も口径は9mmだし、他にも『.38スペシャル弾』もそうだ。ヨーロッパでもそれは同じさ。だがヨーロッパじゃ、さっきも言ったように『ミリメートル表記』だから、インチ表記みたいに細かく数字が変わらねえ。だからどこで区別するかって言うと、今度は弾の長さで判別するって訳さ。

 ちなみにこの『9mmパラベラム弾』の長さは19mm。これが18mmになると、『9mmルガー』って名前に変わる。更に17mmになりゃ、『9mmショート』だ。ちなみにこの『9mmショート』、アメリカに行くと更に『38口径』と名前が変わる。不二子の『ブローニングM1910』は、ちょうどこの9mmショートだ。

 最初に弾頭について説明したが、この『9mmパラベラム』は弾頭によって威力が変わる。通常の弾頭はごくごく普通の『HP弾(ホロー・ポイント)』なんだが、『KTW弾』にすると事情が変わる。『KWT弾』は通称『コップキラー(警官殺し)』と言って、まあテフロン加工を施した徹甲弾みたいなモンなんだが、コイツがまた貫通力にかけちゃ大した威力を誇る。何せ普通の防弾チョッキじゃ効果ねえからな、しばらくは弾と防弾チョッキのイタチごっこみたいな状況だった。結局『警官殺し』の悪名を轟かせて市場から撤退したが、今でも軍用の9mmパラベラムの弾頭はこの『KWT弾』が付いてるモノが多い。

 そういや、弾頭の話で、思い出した事がある。

 弾頭と言えば、『HP弾』の先端に十字に切り込みを入れたモノを『ダムダム弾』と言っている。新ルパン66話「射殺命令!」のラストでビューティーが使ったから、覚えている奴もいるだろう?

 ダムダム弾ってのは、撃たれると体内で弾が切り込みに沿って分裂し、貫通していきやがる。当然撃たれた方だって無事じゃ済まねえし、あまりにも残酷だってんで、戦争でコイツを使うのは1907年のハーグ条約で禁止された。だが狩猟用だとか警察なんかじゃ、今でもこのダムダム弾を使ってる奴らは多い。だからアレは、ニューヨーク市警出身のビューティーが使ったって別に何の不思議もねえし咎める奴だっていやしねぇ、てのが本当の話さ。

 

 

 

さて、と。
しばらく銃について話してきたが、そいつも今日限りでお終いだ。

この後ココを立ったら、もう当分は戻ってこれそうにねえからな。

だから、最後に今まで真剣に俺の話を聞いてたかどうか、ちょっとしたテストを用意した。この講座の第1回からちゃんと聞いてたヤツなら、分かるハズだぜ?

強制はしねぇが、何ならやってみな。

俺は今まで、基本的な事だけを話したつもりだ。これ以上の事は、自分自身で調べてみろ。

そうすれば、もっともっと奥深い世界がおめえを待っていると思うぜ?

それじゃあ、今までありがとよ。

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